家族にやさしい『熟年結婚』をする為に

近頃は、無事に子育てを終えた人々が熟年結婚や熟年離婚をして、残された人生を様々なスタイルで過ごすことが、そう珍しいことではなくなってきています。

もし、私たちがこれらをした場合、相続対策ではいったいどのような問題が起きるのか、ちょっと見てみましょう。

まず、熟年離婚だけの場合は、相続で大した問題は起きません。

離婚した相手が、自分の財産を相続する権利がなくなるぐらいですが、相手との間に生まれた子供には相続権がありますので、子供に充分な財産を相続させてあげて、残された片親を支えられるようにしておけば、それほど問題は起こりにくいのです。

しかし、熟年結婚の場合は、逆に子供にとって負担になる、大きな課題があります。新たに相続人が1人増えることになるため、元の家族からしてみると遺産の取り分が大きく減ってしまうのです。

例として、みなさんが70歳の高齢で再婚すると仮定します。そして家族には、40歳を過ぎた子供が2人いるとしましょう。再婚をする前だと、子供2人があなたの財産を半分ずつ分けて相続する権利があります。しかし、再婚をすると、新たに配偶者になったパートナーが、財産全体の2分の1を相続する権利を持ちます。

そして子供達は残り半分を分けることになり、財産の4分の1しか手に入りません。相続対策もすでに終えているだろう時期に、手に入る予定の金額が急に半分になってしまうのです。これは大変な事件です。

もう一度話し合いをしなくてはなりませんが、みなさんの年齢も70歳では、あまり時間をかけて対策を練っている余裕もありません。せっかく人生の最後を一緒に過ごすために再婚したのに、これでは家族との関係がぎくしゃくしてしまいかねません。

「あの人は財産目当てに結婚したに違いないよ」などと、新しいパートナーの事を影で言われたら、とても辛い物があります。できれば、新しいパートナーと家族には仲良くしてもらいたいものですが、現実にはこのように第一印象があまりよくない上に、様々な困難が伴います。

仮にあなたのパートナーが「相続は放棄するから」と、家族に約束して結婚したとしましょう。しかし、実際に遺産分配が行われる前に相続放棄を申請することは、法律上できない事になっています。

これは、他人に相続放棄を強要されるような事件を防ぐための決まりなのですが、お陰で、実際に放棄するかどうかを申請するのは、皆さんが死んだ後にしかできなくなっています。

なので、その時にパートナーが心変わりするかもしれない、口だけ約束しておいて、いざという時は遺産を全部受け取るつもりかもしれない、などのように疑い出すと、キリがありません。

ならば、と、あなた自身が子供たちに「遺言書に財産は子供2人に相続させると書くから」と言って説得したとしましょう。しかし、これも法律によって、配偶者には『遺留分』という物が設定されているため、配偶者は、財産全体の4分の1を強制的に受け取る事になっているのです。

この遺留分とは、仮に遺産をすべて遺言書の通りに分けてしまうと、まったく財産が手元に残らず、生活が出来なくなってしまうような家族が現れてしまわないように、定められているものです。

そこで1つの手として、新しいパートナーにひとまず許しをもらって、この「遺留分」を放棄する手続きをしてもらう事が考えられます。これを「遺留分の放棄」と言って、遺留分を主張しないことを約束してもらう手続き、となります。

家庭裁判所に申し立てて、「遺留分の放棄」を認めて貰えれば、パートナーが遺留分の主張をすることができなくなる、というもの。こうすることによって、パートナーがいくら財産を相続するのかは、あなたの書く遺言書によって、きちんと決められる事になります。

子供に分配する予定だった財産はそのままに、パートナーには別途財産を用意してあげたり、または生命保険をかけておく、などの方法で遺産を遺しておくと説明すれば、子供たちも納得してくれるでしょう。

また、新しいパートナーが自分から「遺留分の放棄」をすることで、財産だけを目当てに結婚するような考えの人ではないと分かって貰えるかもしれません。

しかし、もしこれらの対策をせずに、子供に内緒で再婚してしまったら、どうなるでしょうか。

その場合、高い確率で激しい相続争いが起きることが予想されます。

人生の目的の大半を成し遂げたあなたが、残された人生をどう生きるかは自由です。ですが、それによって周りの大切な人達が困ってしまわないよう、自分がいなくなった後の事は、できる限り配慮してあげましょう。

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