財産だけでは終わらない相続の問題点

現在、税理士に相続の相談をされる依頼者の多くが、相続問題=相続税の問題と考えられているのが実態。

メディアの影響かもしれませんが、相続と言うと莫大な遺産を巡って家族が骨肉の争いを繰り広げるというイメージをもっておられるのかもしれません。

では現実はというとそのイメージと大きく異なっています。莫大な遺産が有ろうが無かろうが相続の問題は起こるのです。もちろん莫大な遺産がある場合は、税金を含めて専門的な実務能力が要求され、トラブルが生じる可能性も無いとは言えません。しかし資産家の方はだいたい自分の死んだ後のことについて何か手を打っているものです。

一般的なケースを見てみましょう。遺産の評価額が6000万円以上ならば、相続税がかかってくる可能性があります。相続税の基礎控除額は現在、5000万円+(1000万円×法定相続人の人数)となっています。

もし奥さんと2人のお子さんが法定相続人ならば、先程の式に当てはめると、5000万円+(1000万円×3人)=8000万円となり、8000万円を超過した財産分に課税されることになります。ただし平成27年1月以降に基礎控除額が現在の60%の水準まで引き下げられる予定となっています。

「私のところはそんな財産無いから、税金なんて心配する必要が無い」と考えている方は意外と多いかもしれません。そしてそんな風に考えている方は、相続に関心を示さないもの。そしてそれが、相続の問題が生じた時に大問題になることが少なくないのです。

それはデータでも裏付けられています。相続人の間で遺産分割協議が決裂し、家庭裁判所の調停に持ち込まれたケースが平成22年度だけで7987件もあります。これを被相続人の遺産の評価額で見てみると、全体の4分の3に当たる5934件は、遺産額5000万円以下のケースなのです。早い話が、「争族」は課税されない相続で勃発する可能性が高いのです。

遺産に課税される場合は、相続人が被相続人の死亡を知った日から10カ月以内に、申告書を出さなければなりません。10カ月を超えると加算税がプラスされてしまうのです。そういうことがあるため、相続人も遺産分割協議を期間内に終わらせるように努力するのです。

しかし一方、税金が課せられないとわかっているならば、期限に振り回されることはありません。いわばタイムリミットが無い状態ですので、エゴが全面に出て、協議だけが続いていくと言う事になりかねません。

調停になった時、争点となるのは、遺産の分け方になります。ですが、「問題は遺産の額だけではない」というのが税理士の率直な感想。一番の問題となるのはお金の「勘定」ではなく、人の「感情」。感情の問題は勘定のように割り切れないので、解決が難しいのです。

相続人同士の協議で結論が出ず、家裁の調停となった場合は、原則民法に規定してある「法定相続分」従い、遺産が分割されることになります。形式上はそれで終わりになったはずなのですが、相続争いが遺恨となることが少なくありません。

それとは逆に、数字上は公平ではない遺産分割であっても、相続人全員が納得しているケースも実在します。そういったケースの多くは、勘定より、感情に配慮された相続だと言えます。

相続の問題は、お金や割合といった数字で説明することが多々あります。そういうものについて尊重するのは当然ですが、それと同じくらい尊重しなければならないのは、相続人の心なのです。

相続とは人間の間に起こる出来事です。財産の問題だけとして捉えるのではなく、心の問題としても捉える必要があるといえます。

関連記事

ページ上部へ戻る