親と共に尊厳死を考えることの重要性とは

「尊厳死」という言葉について、考えたことがあるでしょうか。人の命は重いもの。ましてや愛する家族、親のことであれば、できる限り長く生きてほしいと思うのは当たり前のことでしょう。

しかし、愛する人が闘病でやせ細り、わずかな期間の延命はできてもこれ以上の治療は本人に苦痛を与えるだけという事態になった時、どれだけ苦痛でも生きていて欲しいと考えることは、正しいことばかりではないのかもしれません。

人がただ生きながらえる肉体としてではなく、人としての尊厳を大切にして死に望むこと、尊厳死。医療技術が発達した現代だからこそ、延命治療をするのか尊厳死を選ぶのか、それは死に臨む本人だけではなく、それを見守る家族にとっても、他人ごとではない課題となっています。

鹿児島市の山下悦司さん(47)=仮名は、実父の死に際して尊厳死を選択した一人。2年間に及ぶ闘病で意識もなくやせ細り、元気だったころの威厳を失った父親の姿を見守り続けた山下さんは、担当医から人工呼吸器を装着して延命治療をするかと問われた時に、尊厳死という言葉を初めて真剣に考えだしたといいます。

このまま治療を続けるのか、それとも苦痛を長引かせずに自然な死を認めるのか。高額な医療費の捻出や、介護に疲れ切っていたこともあり、山下さんは延命治療を望む妹を説得し、積極的な治療を行わないことを選択しました。

父親は結局その翌日に亡くなったのですが、この判断が正しかったのかどうかという葛藤は、山下さんをいまだに苦しめ続けているといいます。尊厳死をめぐる決断により、医師や病院との裁判に発展したり、残された家族の間にトラブルが生じることも多くあると聞きます。

「非常に難しい判断ですよね。本人から正常な判断ができるうちに、延命は望まないことを表明してもらっていたらよかったんです」と語るのは公証役場公証人の担当者ですが、これは尊厳死に向き合った家族の本音でもあるのではないでしょうか。

命に責任を持てるのは誰でしょう。

愛する家族に自分の命の選択をゆだねるのは重いと考えるのであれば、ぜひ自分の延命治療や尊厳死に対する考え方を家族に伝えておいてほしいもの。特に延命治療を望む場合には、公証人が作成した公正証書を残しておけば、無駄なトラブルを残す恐れはありません。

そこまで大事にしなくてもいい、自分の意思を家族にわかってもらいたいというのであれば、エンディングノートに書き残すのはどうでしょう。自分の死に責任をもつこと。これは親が子供に遺す最後の教えなのかもしれません。

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