「生活者」にとって家事は大事な役割

病院だと家事をする必要はありません。なぜなら病院は「生活する場所」
ではないからです。しかし、家に戻れば毎日の生活のための家事が待っ
ています。要介護者は病気や障害、認知症のために昔のように家事を行
えなくなっています。かといって、まったく家事をしなくなれば生活機
能はさらに低下してしまいます。

家事は障害を負う前や、若いときのようにはできません。それを認めて
あげることが必要。しかし生活するうえで家事は毎日行わなければいけ
ないものです。毎日行ってきたということは、その人の生活習慣という
ことです。ヘルパーなどからの援助があれば家事を行える人は多いため、
できる範囲で行うことが心身の自立につながります。

認知症になったら、ガスや火の扱い、包丁を使うことは危ないのではな
いかと思われるかもしれません。しかし、グループホームなどではよく
見かける光景ですが、中程度の認知症になっていても包丁が扱えるおば
あちゃんは割といるものです。それこそ何十年と行ってきた家事は身に
ついて覚えているのでしょう。

認知症でも体が動くから家事ができるのだ、と思われる方もいるかもし
れません。しかし、家事というのは単に生活するための「手段」ではな
く、他者との関係性を深めるための意味も持ちます。

とある施設で、入所している要介護高齢者に掃除という役割をお願いし
ました。掃除といっても自分のベッド回りを小さなホウキで掃くくらい
のものです。しかし、重度の障害をもち、寝たきりで意欲低下が激しか
った人が、自分のベッド回りの掃除を始めたあと、他人との会話が多く
なったということがあります。これは掃除をしてくれる役割に対して、
介護スタッフが本人を褒めて認める言動をしたことにより、本人の自尊
心が少しでも回復できたからだと思います。

しかし女性でも、もともと家事が嫌いな人や、男性など家事経験がない
人に家事をさせるのは逆効果になることもあります。すべての人に当て
はめて家事を促すことがメリットになるわけではありません。本人の生
活歴や性格、現在の認知能力や身体機能の程度を総合的に判断する必要
があります。

家族にはそんな高度な判断はできないと思われるかもしれませんが、本
人のことを一番よく知っているのは身近な家族です。プロの介護者は多
くの要介護老人を見て、接してきていますから、いろいろな工夫ができ
ます。そういった知恵を借りて介護にあたっていただきたいと思います。

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