認知症を理解し、本人を受け入れるということ

認知症は獲得された知的機能が後退していくのですが、認知症を単に不
治の病という価値観だけで捉えると、そこには救いがありません。

認知症の主な症状は物忘れですが、物忘れの他にもいろいろな認知機能
が低下します。

今日が何日の何曜日か等、はっきりした場所がわからなくなることを、
見当識障害といいます。衣類の着方が分からなくなるのが遂行機能の障
害です。周囲の状況から、こんな行動が求められているんだろうなと判
断する力も低下します。認知症がもっとも重度になると、最終的には獲
得してきたすべての認知機能が低下し、家族のことも認識できなくなり
ます。

こう聞くと、やはり認知症は怖い病気だと感じられるかもしれません。
しかし、認知機能の低下には個人差が強く出ます。決してすべての知的
機能が低下するわけではありません。これまでたくさんの認知症のお年
寄りを診てきた医師によれば、意外にも周囲の状況を判断する力は最後
まで保たれていると感じます。それはロジックではなく、フィーリング
の力とでもいえばいいのでしょうか。

認知症状についての医学的な理解は持っておいたほうがいいのはいうま
でもありませんが、教科書的な知識は役に立たないことも多いものです。
認知症の理解を複雑にしているのは、認知症になった本人がもともと持
っていた自己評価や、周囲の人間の関わり方で症状が一人ひとりまった
く違ってくるからです。

認知症介護をするうえでの鍵は、「認知症はその人の一部」であるとい
う理解ができるかどうかではないでしょうか。治らない認知症は老化の
ための生理的変化ととらえることができるかどうか。つまり物忘れする
ことが自然な状態だと家族が思えるかです。

もちろん、家族は物忘れのない元気な頃の本人のイメージを強く持って
いるため、考え方を転換することは非常に難しいことなのですが・・・。

認知症者の関わり方で大事なのは、これまでの習慣、環境、関係をでき
るだけ変えないということです。そしてできないことはあきらめて、で
きるところを認めてあげること。家族だからこそ難しいことではありま
すが、介護職やケアマネージャーなどの介護の専門家との関わりのなか
で、認知症を理解していっていただきたいと思います。

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