相続対策のための信託活用術、委託者は信託銀行と弁護士・司法書士どちらがいいの?

平成27年の相続税法改正により大幅に相続税が増税される予定です。その影響で相続に関する関心が非常に高まっており、数多くの相続に関する書籍が本屋に並んでいます。

団塊の世代は日本の経済発展のため高度経済成長期に汗水たらして働き、貯蓄に励み、資産をストックしてきました。この団塊の世代が平成26年から平成27年にかけ、一斉に定年を迎えて退職するといわれています。

この定年をきっかけに、相続が争族にならないようストックしてきた資産を残された家族に分け、引き継ぎたいと思っている方も多いかと思います。

最近、自分のエンディングを描く活動である「終活」が注目されてきています。家族に内密に遺言書を書いている人もいるのではないでしょうか。

相続対策には遺言書の存在が不可欠といわれています。遺言書は自筆で書くのが望ましいと言われています。しかし、被相続人が年をとると認知症になる可能性が出てきます。認知症になってからでは遺言書の作成どころか、遺産分割の話し合いもできせん。

また、相続対策として銀行から借り入れをして不動産を購入し、アパートを建てるというような策もありますが、これも実行不可能でしょう。

被相続人が認知症になった場合、成年後見制度を利用するという方法があります。

成年後見制度とは、被後見人の財産の確保が目的の制度。したがって、相続対策として、資産を活用するには、適した方法とはいえません。また、面倒な裁判所への書類手続きなどが発生し、合理的とはいえません。

仮に、被相続人が認知症にならず遺言書を自筆で書いたしても素人であるがゆえに、遺言書の不備が発生し、遺言書としての体をなさない可能性もあります。したがって、成年後見制度や自筆遺言書作成を利用せず、相続対策を万全に行うために信託制度を活用している人が増えてきています。

今回は、その信託制度について検討していきます。

信託制度に対する関心が高まってきた要因として、平成19年に信託法が新たに施行された影響があります。

信託制度とは、資産の所有者である委託者が第三者の受託者に財産の運用の委託を依頼し、特定の者である受益者に対して利益を授与する制度。

この信託制度を利用する条件としては、遺言と同じく資産の所有者である委託者の意思能力があることが条件になるので、委託者が認知症になった場合、利用することはできません。それでも、この信託制度を多く利用している人がいる要因は、資産の所有者である委託者が、自分の老後や死後の期間に安心して第三者の受託者に財産の運用を任せられることが挙げられます。

信託制度を利用する場合、現在の信託法では信託銀行などの金融機関に委託するケースと弁護士や司法書士などの個人へ委託するケースの2つが考えられます。

この2つのケースについて、信託費用の面から比較検討してみます。

信託銀行などの金融機関に委託するケースは、まず、申請時の費用がかかります。申請時の費用は30万円台。次に、年間管理費がかかり、こちらは5,000円台になっています。どちらの費用も金融機関ごとに差はありません。

さらに、遺言執行費用がかかります。この遺言執行費用は相続財産の金額の1~3%になり、例えば、10億円の相続財産の場合、1,000万円から3,000万円となります。これに対して、1億円の相続財産の場合、100万円から300万円となります。相続財産の金額により変動します。

さらに、最低報酬額は、地方銀行で80万円、信託銀行では、108~160万円となっています。こちらも金融機関により違いが出てきます。よって、信託銀行などの金融機関に委託するケースの信託費用は、最低でも200万円は見積もっておくべきではないでしょうか。さらに、相続財産の金額によっては、1,000万円近い金額もあり得るといえます。

これに対し、弁護士や司法書士などの個人へ委託するケースの最低報酬額は、弁護士の場合、最低ラインで20万円台で受ける人もいます。報酬額が自由化されていることが要因として考えられますが、事務所ごとに差があるといえます。

この報酬に相続財産の1~3%を加算しているケースが多い模様。そして、弁護士の場合、遺産分割協議の時に相続人争いが起きた場合でも即時に対応してもらえるというメリットがあります。

また、司法書士の場合は総額30万円から相続財産の1%程度の事務所が多いようですが、弁護士のように、訴訟慣れしている司法書士ばかりとはいえません。

さらに、税理士、行政書士も考えられますが、弁護士や司法書士のように訴訟対応はできませんし、報酬の額に差があります。

したがって、費用の負担で考えれば、訴訟対応もできる弁護士や司法書士などの個人へ委託するほうが大手の信託銀行より、有利といえます。将来への安心感と安全性を優先すれば、大手の信託銀行に委託したほうがいいともいえます。

ただし、大手の信託銀行は数年ごとに担当者が異動するので、深い信頼関係を構築しにくいもの。さらに、相続人が遺産分割協議の結果、遺言に納得せずに執行を依頼しないケースも考えられます。この場合であっても、信託銀行は規程通りの執行報酬を要求してきます。

信託制度を採用した場合に、どちらに委託するかはそれぞれのメリットとデメリットを比較して、生前に相続人と被相続人の間で良く話し合って結論を出すべきではないでしょうか。

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