有料老人ホームの不当表示がはびこる本当の理由

平成16年10月1日から、景品表示法の対象に有料老人ホームが指定されま
した。

景品表示法により、虚偽・誇大広告や実際よりも優良であると誤認させる優良
誤認などの不当表示を防止し、公正取引委員会が事業者側に広告すべき項目を
規定してデメリットまで強制的に表示させるようにしました。

例えば、入居者が当初入居した居室から他の居室に住み替える場合に、住み替
え後の居室の一人当たりの占有面積が、当初入居した居室の一人当たりの占有
面積に比して減少したり、居室の利用に関する費用について、住み替えによる
居室の構造若しくは仕様の変更、又は住み替え後の居室の一人当たりの占有面
積の減少に応じた調整が行われないことを表示しなければなりません。

しかしながら、有料老人ホームの広告は、内容が多岐にわたるので、入居者が
法令に抵触しているのかを理解するのが難しく、従っていない有料老人ホーム
が多いのが現状。定められた表示をしなかった場合には、不当表示で法令に違
反したとして、公正取引委員会が宣伝広告の排除命令を出します。

この排除措置命令が出て従わない場合には、罰則規定がありますが、排除措置
命令が出ないまま不当表示がはびこっているのが現状。有料老人ホームの広告
に、法律で不当表示の規定があることを知らない人がほとんどです。

しかも、公正取引委員会は、人手不足でチェックが行き届いていません。多量
生産の製品の表示ではないので排除命令が出てから広告を排除すればいいと、
たかをくくっている節があって、野放し状態です。

トラブルが起こらないように、広告表示に明示しなさいと表示の問題としてい
ますが、根本原因は、有料老人ホームに介護を含めた終のすみかとしての役割
を期待しているのに、その役割を果たせていないことにあります。

広告表示に契約条件を詳細に規定しても、素人には完全には理解はできません。
高額な入居一時金を支払ったのに、要介護度が進んで相部屋に入れられたり、
認知症の程度が進んで、他の入居者に迷惑がかかるという理由で、退去を要請
されることがあります。

列記された条件の裏に、まさか終のすみかまで奪われることとなるようなこと
まで、書かれていることを読み取ることはできません。終身利用権には、居室
の居住権や相続権がありません。

有料老人ホーム側の言い分では、介護を効率的に行うために、部屋を認知症の
人を集めた相部屋に変えたり、介護度が進んで病院に入院させて治療させるこ
とになるので、止むを得ないことでもあります。

しかし、重介護の入居者を個室で治療できないのに、有料老人ホームが終身利
用権を宣伝することは入居者の期待を裏切っています。そもそも10年、20
年後まで予測ができないのに、終身利用権という夢の権利を表示して約束する
こと自体が問題。

入居者にとって、将来に体力が想像以上に衰え、認知症まで発症することは、
可能性は認識していても、その時に至らないと深刻な事態は分かりません。入
居してから気に入らないと退去する人は、入居一時金の返却額に愕然とするか
もしれません。

有料老人ホームの建屋や内装は、10年も経てば、あちらこちらが傷んで修理
が必要になります。自然災害や火災にも遭遇するかもしれません。経済情勢や
福祉政策が大きく変って、有料老人ホームの経営状況が将来に渡って変わらず
に維持できるかもはなはだ疑問です。

有料老人ホームの終身利用権は、入居者が不確定要素を考慮しながら色々な事
態を想定し、その限界を自ら判断して入居を決断しなければなりません。しか
も、法律に決められた表示をきっちりしているかどうかまでチェックしなけれ
ばならないのです。

もうこうなれば、個人のチェックでは、不可能かもしれません。認可権限のあ
る自治体がしっかりしたチェックをし、行政指導を頻繁に行っていくしかない
のが、有料老人ホームを取り巻く現状なのです。

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