消費者契約法は有料老人ホームを変えていく

消費者契約法は、消費者と事業者間の情報の質、量、圧倒的な交渉力の格差を
認め、消費者の利益の擁護を図る画期的な法律です。不当な契約について消費
者に取消権を与え、消費者にとって不利で不公正な契約条項について無効にで
きます。

ただ、消費者自身が契約の無効を主張しないと、たとえ不当な勧誘行為や不公
正な契約条項があっても無効にはなりません。

たとえば、消費者契約法の施行後に提起された入学金返還訴訟があります。

大学に合格後、他大学に合格したために入学辞退することとなって、いったん
支払った納付金を返還請求した訴訟のことです。入学募集要項などで「いった
ん納入された納付金は、いかなる理由であろうと返還しません。」ということ
が記載され、学校側も入学辞退する学生の納付金を収入としてあてにするよう
なところがありました。

しかし、最高裁の判決は、納付金の内、入学権利を維持する入学金は返還不要
とし、入学金以外の部分(授業料、施設費等)については、原則3月31日ま
でに辞退を申し込めば全額返還すべきという判決が出されています。

有料老人ホームの契約書は、これと類似して入居者に不利で一方的な規定がよ
くみられます。

特に入居一時金については、老人福祉法が改正されて、事業者が受領できる前
払金は、「家賃、敷金及び介護等その他の日常生活上必要な便宜の供与の対価」
(以下「家賃等」)に限定され、「権利金その他の金品」名目での受領が禁止
されました。(老人福祉法第29条第6項)

ただ、既存の有料老人ホームには3年間の経過措置があるため、平成27年3
月までは従来のままでも可能です。

従って今後は、高額な入居一時金の内、入居する権利を得る入居金、入居時費
用、権利金、施設利用料は、認められなくなります。また入居一時金を全額初
期償却として入居した時点で償却されて消えて無くなるということもなくなり
そうです。

今後は、入居一時金を日常生活上必要な便宜の供与の対価として償却する不合
理さも浮き彫りになってくるでしょう。介護主体の有料老人ホームの場合は、
償却期間を5年と定めている所が多く、5年以内に退去すれば、入居期間に応
じて償却分を差し引いた残額が返還される事になります。

しかし、償却期間を過ぎても入居し続けることは、月額使用料を払い続ければ
当然にできます。月額使用料の内訳の部分と重複する内容なら意味が通りませ
ん。

また、償却期間を5年と一定にする根拠は極めてあいまいです。5年経過後も
居住続けるなら日常生活上必要な便宜の供与の対価として償却期間5年と限定
することにこそ無理があります。さらに、もし償却年数が平均余命に基づいて
決められるなら、年齢によって入居一時金は異なるはずです。

他にも厚生労働省の指針では、介護居室は、広さが13平方メートル以上の個
室、廊下の幅は1.8メートル以上、入居者を公的介護施設や病院、診療所な
どに移して介護してはならないことが提言されています。

また、公正取引委員会の定めた不当景品類及び不当表示防止法により、有料老
人ホームに関する不当表示が指定されています。

土地又は建物、施設又は設備、居室の利用、医療機関との協力関係、介護サー
ビス、介護職員等の数、管理費等について、明確にホームぺージ等で表示され
ていないのは、不当表示として規定しています。

しかし、まだまだ多くの有料老人ホームが法令通りに表示していないのが現状。

また、各都道府県の認可機関では、表示が適合しているかどうかも、ほとんど
チェックしていません。

消費者の利益を守るという消費者契約法に基づいて、有料老人ホームは少しず
つ変革していく過渡期にあると言えます。

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